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賃貸住宅と大家による居室への立ち入り(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.アパート経営をしている大家です。雨漏りの修繕をしたいのですが,入居者から居室への立ち入りを拒否され困っています。入居者の不在中,合鍵で居室に入って修繕をしてもよいでしょうか。

 

A.入居者の方(借主)は,賃貸借契約に基づき居室を排他的に使用する権利があります。従って,貸主であっても,借主の承諾を得ずに無断で居室に立ち入ることはできません。貸主が無断で立ち入りをした場合,借主の占有権やプライバシー権を違法に侵害したことになり損害賠償義務を負うことになります。また,刑事上,住居侵入罪に該当します。

 一方で,借主は,貸主による「保存に必要な行為」を拒むことがでません(民法606条第2項)。「保存に必要な行為」とは,賃貸物を使用・収益に適する状態にするために必要とされる行為であり,通常、雨漏りの修繕はこれに該当します。もっとも,修繕のために,無条件で立ち入りが許される訳ではなく,まずは借主に修繕の内容,所用時間,必要性等を説明して承諾を得るように努めましょう。そのような過程を経ても借主が承諾しない場合には,最終的に,貸主は賃貸借契約を解除することになります。

 なお,ガス漏れや漏水事故等,非常に高い緊急性が認められる場合に,直ちに居室に立ち入ってガス栓や水道の元栓を閉めるなど適切な措置をとることは「保存に必要な行為」ないし「緊急事務管理(民法698条)」として許されるでしょう。

 

(平成29年6月21日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


賃貸住宅とペットの飼育禁止条項(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.賃貸マンションの大家ですが、住人の一人がペット飼育禁止条項に違反して小型犬を飼っているようです。契約を解除して退去してもらうことは可能でしょうか?

 

A.一般に裁判例はペット飼育禁止条項の有効性を認めていますが、当該条項の違反があっても直ちに契約解除を認めるのではなく、他の要素も考慮し、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されるに至ったと認められる場合に契約解除を認めています。

 例えば、犬や猫の場合、居室や共有部分に汚れや傷が付いたり、騒音や悪臭等で近隣住民に迷惑をかけるおそれがあるため、警告、飼育中止の申し入れにも関わらず之に従わない場合には、契約解除、建物の明け渡し(退去)も認められることが多いでしょう。他方、熱帯魚や小鳥、ハムスター等の小動物で衛生面、騒音面等でも住環境にほとんど影響を与えない場合には契約解除が認められない場合が考えられます。

 ペット飼育禁止条項を契約書に記載する場合には、具体的にどのようなペットの飼育が禁止されるのかを明記して将来の争いが生じないように注意しましょう。

 

(平成29年2月15日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


婚約破棄と慰謝料・子の認知・養育費(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.結婚を前提に交際していて先日妊娠が発覚しましたが,相手が結婚を決めきれなく,中絶を望んでいます。私は結婚と出産を望んでおり,結婚できないなら慰謝料と子の認知,養育費の請求を考えています。このような場合どういった動きをするべきでしょうか。

 

A.交際相手が結婚を拒否した場合,不当な婚約破棄を理由として慰謝料請求をすることが考えられます。慰謝料請求が認められるには,当事者が真実夫婦として共同生活を営む意思で婚姻を約し,長期にわたり肉体関係を継続するなどの事情が認められること,婚約破棄に正当な理由がないことが必要です。これらに関する証拠(2人の交際中のやり取りを示すメール,手紙,相手の不貞行為の証拠等)は保存しておきましょう。

 子の認知については,胎児を認知することもできますので(民法783条),まずは相手に任意での認知を求めましょう。相手が拒んだ場合には,家庭裁判所に胎児認知の届出を求める調停を申立てることになります。調停が不成立となった場合には認知の訴え(強制認知)を提起することになりますが,認知の訴えを提起できるのは子の出生後と解されています。

 養育費について,養育費調停の申立ては子の出生後にしか行えませんが,胎児の間でも相手との交渉によって子が生まれてから月○万円を支払うとの合意を行うことはできます。その際は合意の内容を明確にし,将来不払いが生じた場合に相手の財産に対する差押えを容易に行うために公正証書を作成しておくとよいでしょう。

(平成28年10月13日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


雇用契約と退職(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.新入社員(日給月給制)として4月から働き始めましたが,過酷な労働条件で,事前の話と違うので,上司に退職したいと伝えましたが保留にされています。退職届を郵送し,明日から出勤しなくても大丈夫でしょうか。なお,退職申入れについて就業規則や労働契約に定めはありません。

 

A.「期間の定めのない雇用契約」については,各当事者はいつでも解約申入れをすることができますが(民法627条1項前段),雇用契約はあなたからの解約申入れから2週間を経過した後に終了します(同項後段)。従って,退職届が会社に届いた後,2週間は従業員として労働力を提供する義務があり,無断欠勤により会社に損害が生じた場合,損害賠償義務を負うことがありますので,注意が必要です。

 また,既に上司に退職したいと伝えていますが,口頭でのやりとりを証明するのは難しいと思われるため,改めて退職届を提出し,退職の意思を明らかにしておいた方がよいでしょう。

 以上の通りですから,退職届を提出した後,2週間は勤務を継続する必要がありますが,過酷な労働によって病気や体調不良になった場合には,医師の診断を受けた上で仕事を休むことも考えてもよいと思われます。

 なお,完全月給制の場合は,月の前半に申入れればその月末に,月の後半に申入れれば翌月末に終了します。また,就業規則や労働契約に予告期間を2週間より延長する定めがある場合には1ヶ月程度は有効とされる可能性もありますので,この場合にはご注意下さい。

 

(平成28年6月15日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


遺言内容の撤回・取消(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.父(成年被後見人)が先日亡くなりました。遺言書では長男である私に自宅の土地建物を相続させるとあったのですが,生前に父が老人ホームへ入居する際,自宅は売却されていました。このような遺言はどうなるのでしょうか?

 

A.遺言者は,いつでも自由に遺言を撤回できます。従って,一旦作成した遺言を取り消して異なる遺言を作ることができます。また,今回の事例のように,遺言で決めた内容と異なる財産の処分行為も自由にできるのが原則です。

 遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合には,抵触する部分について遺言は撤回されたものとみなされます(民法1023条2項)。「自宅の土地建物を長男に相続させる」という遺言内容と,生前に自宅を売却するという行為は抵触するものですので,「自宅の土地建物を長男に相続させる」という遺言内容は撤回されたことになります。

 今回の事例では,成年後見人による生前の売却行為という点が特異ではあります。しかし,成年後見人は,家庭裁判所の許可を得て成年被後見人の居住用不動産の処分することもできます(民法859条の3)。例えば,老人ホームに入居する費用捻出のため不要となる自宅を売却するのが適当と言える事案であれば,裁判所の許可も下りる可能性が高いでしょう。従って,成年後見人が裁判所の許可を得た上で売却していた場合,自宅の土地建物の売却は有効であり,遺言は取り消されたことになります。

 

(平成28年1月19日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


海外居住者との相続手続(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.先日,父が亡くなり相続手続を進めたいのですが,兄弟のうち一人(弟)が海外に居住しています。どのような手続が必要でしょうか。

 

A.相続人の中に海外居住者がいる場合であっても,誰がどの財産を相続するかを話し合い,遺産分割協議書を作成する必要があります。遺産分割協議書には,相続人全員が署名・実印による押印をして印鑑証明書を添付する必要があります。

  しかし,海外居住者は日本での住民登録抹消と同時に印鑑登録も抹消されてしまうので,印鑑証明に代わるものとして「署名証明」制度が設けられています。署名証明は日本での手続のために現地の在外公館で発給され,申請者の署名・拇印が領事の面前でされたことを証明するものです。証明の方法は,〆潦宛館が発行する証明書と申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割印を行うもの,⊃柔措圓僚靆召鮹影箸脳斂世垢襪發里裡下鑪爐任后0篁妻割協議書は,通常,,諒法によるので,事前に書面を完成させて持参することになります。

  更に,遺産分割協議の結果,海外居住者が不動産を取得する場合等には「在留証明」も必要になります。在留証明書は日本国内居住者の住民票に相当するもので,現地の在外公館に申請して発給を受ける必要があります。

  ご質問のケースでは,弟さんの署名証明及び弟さんが不動産を取得する場合等には,署名証明に加えて在留証明を現地の在外公館で受ける必要があります。

 

(平成27年10月7日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


相続と寄与分(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.長年同居して私が療養看護をしてきた父が亡くなりました。私が父の療養看護をしてきたことは,相続の際に考慮されますか。

 

A.あなたが療養看護をしてきたことは寄与分として考慮される可能性があります。寄与分とは共同相続人中に被相続人の財産の維持や増加に特別に貢献した者がある場合に,このことを考慮せずに相続分を決めることの不公平を是正する制度です。寄与分が認められた相続人は遺産のうちの相当額の財産を相続分以外に得ることができます。

療養看護は寄与分として考慮され得ます(民法904条の2)が,一方で親族間には,民法上互いに扶養すべき義務が課されています(民法877条)。そこで,療養看護は,民法上の扶養義務の範囲を超えるものであって初めて寄与分として考慮されます。

扶養義務の範囲を超える療養看護と認められた事案として,病弱で老齢の母と20年余,同居して扶養し,痴呆が高じて死亡にいたるまでの10年間は常に付添っていた事案などがあります(盛岡家裁審判昭和61411日)。この事案では昼間は常に傍らに付添い,夜間は不寝番をしなければならない状態でした。

親族間の扶養義務の範囲を超える療養看護に該当するには,この事案のように通常,人を雇う必要があるような要看護状態に対する療養看護であることが一応の目安と考えられています。

 

(平成2777日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨)


交通事故と後遺障害の認定(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.交通事故に遭い,いわゆるムチウチの症状が出たため通院していました。治療が終了(症状固定)しましたが,まだ痛みが残っています。今後はどのようにすればいいでしょうか。

 

A.治療終了後(症状固定後)もムチウチによる痛みが残っているのであれば,後遺障害として認定を受ける必要があります。後遺障害認定申請手続には〜蠎衒任意保険会社を通じて行う事前認定,被害者の側から直接自賠責保険会社に対して申請する被害者請求という方法があります。

いずれの方法でも,まずは,医師に後遺障害診断書を作成してもらい,医療情報その他の必要書類を提出します。

後遺障害診断書作成にあたっては医師に完全に任せてしまうと,ムチウチの診断に必要な診断結果が記載されないことも有り得るので,弁護士などに相談しながら,〇故状況,■悖弌ぃ唯劭錨の画像所見,神経根誘発テスト・深部腱反射テスト・筋萎縮検査等の神経学的検査結果は最低限記載してもらうようにお願いするとよいでしょう。

また,申請の結果,後遺障害に非該当とされた場合であっても,異議を申立てることができます。異議の申立てには,例えば再度の検査結果を記載した診断書,医師の意見書など新しい医証を添付するとよいでしょう。

後遺障害(ムチウチ)が認定されると逸失利益,後遺症慰謝料が損害として相手方に請求できますので,治療終了後(症状固定後)も痛みが残るようであれば,そのまま放置せず,後遺障害認定手続をとることをお勧めします。

 

(平成27422日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨


離婚と財産分与(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

Q.結婚して30年の専業主婦です。夫と離婚することになりましたが,夫に将来支給される予定の退職金は財産分与の対象となりますか。

 

A.財産分与とは,当事者双方がその協力によって得た財産(民法7683項)を離婚する際又は離婚後に分けることをいいます。財産の名義は問いません。例えば夫の給与収入で自宅を夫名義で購入した場合,妻が専業主婦でも家事労働に従事して自宅の取得に協力・寄与したものとして,自宅は財産分与の対象となります。同様に預貯金,自動車,株式なども夫名義であっても双方の協力によって取得した財産であれば財産分与の対象となります。

将来支給される予定の退職金については,退職前の段階でも,将来支給される蓋然性が高ければ財産分与の対象となります。将来支給される蓋然性が高いと認められるかは,退職までの期間,職種,勤務先などを考慮して事案ごとに判断されます。

例えば,定年退職まで約8年の税務職員(国家公務員)の事案(名古屋高裁平成121220日判決)で財産分与が認められたことがあります。

具体的にあなたの夫の退職金が財産分与の対象となるかもケースバイケースですので,弁護士にご相談されることをお勧めします。

 

(平成27113日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨


相続と住宅ローン(中日新聞尾張版掲載 「暮らしの法律相談」)

 Q.両親名義になっている持家を将来相続することになりました。その家は両親がローンを組んで購入し,現在も支払中です。もし相続時にまだローンが残っていた場合はそのローンの支払も私達がするのでしょうか。

 

A.「相続」とは亡くなった方の財産一切を取得することです。この財産には,不動産・預貯金等の資産の他に借金等の負の財産も含まれます。ですから,相続により親の持家を取得した子は,親の借金である住宅ローンを返済しなければならない,というのが原則です。

 しかし,現在では多くの金融機関において,個人宅の住宅ローンを組む際には「団体信用生命保険」の加入を条件としています。「団体信用生命保険」とは,住宅ローンの返済途中で本人が死亡又は高度障害になった場合に,本人に代わって生命保険会社が住宅ローン残高を支払うという保険です。ですから,親が亡くなった場合でも,相続人である子がローンを支払う必要はない,とのケースが多いです。

 なお,消費者金融からのキャッシングやクレジットカード利用分(ショッピング),事業資金の借入金等住宅ローン以外の借金も相続対象になりますが,債務を含めて一切の財産の相続を拒否する「相続放棄」という制度を利用すれば,借金の支払をしなくてもよくなります。

 

 (平成26921日中日新聞全尾張版「暮らしの法律相談」掲載,執筆担当:弁護士野村一磨


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